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第5章「若紫」(3/3)少納言

若紫(3/3)少納言 少納言、話が長くて意味不明  母親代わりにお仕えする女性。後半では「乳母」と呼ばれています  十月に朱雀院の行幸がある。踊り手や、只者でない家の子達、上達部、殿上人達なども、その方面に付く者付く者をすべて従えなさるので、親王達、大臣から始めてとりどりの才を習いなさる。暇はない。  山里の人にも久しく訪れていなかったのを思い出して、その地まで遣わしたところ僧都の返事だけがある。 「過ぎた月の二十日の頃になあ、ついにむなしく見なさってしまい、世間の道理だけど、悲しく思っております」  などとあるのをごらんになると、世の中のはかなさもあわれに、後ろめたげに思っていた人もどうなるんだ、若い頃に恋はしたろうか、なき御息所に続き奉った、など捗々しくはないが思い出して、浅くなく弔いなさった。少納言が、理由もなく、というわけでもなく、ご返事など聞かせたよ。 《普段着》  浄めなどは過ぎて京の殿に、などとお聞きになったので、ほどを経て自分から、のどかな夜にいらっしゃった。じつに凄そうに荒れている場所に人が少なくて、どんなに幼い人は恐ろしいことだろうか。例の場所にお入れして、少納言がお有様などをうち泣きつつ聞かせ続けると、あえなくお袖もただならない。  宮にお渡ししようとおりましたが、なき姫君がとても情けなく憂いものに思い聞こえなさったのに、まだ無理に子でない年で、まだ捗々しく人の空気も見知りなさらず、からっぽなお時期なので、数多くなにしなさるという中の侮らわしい人にて交じりなさらんか、など過ぎなさっているも、世と共に思い嘆ていることや「はっ」とすることが多くおりますのに、こうかたじけなきなげなお言葉は、後のお心も辿り聞こえさせず、とても嬉しくは思いおられない折節にありながら、少しもなぞらいなる様にもなにしなさらず、いつもご年齢より若やいでおられたので、とても片腹痛くおります、と聞かせる。  何で、こう繰り返し聞こえ知らせる心のうちをお包みになるのか。その言う甲斐のないお心の有様を、あわれにゆかしくおぼえなさるのも、契りは特別でなあ。心には思い知られました。なお、人づてではなく聞かせ知らせたい。 あしわかの 浦にみるめはかたくとも こは立ちながらかえる波かは 「目覚ましくあるなあ」 とおっしゃると、 「本当ですね、とても畏れ多かった」 と言って、 寄る波の...

第5章「若紫」(2/3)帰還

若紫(2/3)帰還  聖は動きもできないが、ともかくも護身法のために参上して下さる。枯れた声が比類なく透き通り、ひずむのも、悲しいくらいに尊く「ダラニシンゴン」陀羅尼真言を唱えた。お迎えの人々が参上して治癒なさった喜びを聞かせ、御所からもお見舞いがある。僧都は、世にも見ない形の果実をあれこれと谷の底まで掘って出し、忙しく声を上げなさる。今年までの誓いが深くありまして、お送りにも参りおられないこと、なかなかにも思いくだされましょうかな、など聞かせなさって、大御酒を届けてくださる。  山水に夢中になっておりましたが、御所からも覚束なくして頂いたのも、畏れ多かったなあ。今、この花の頃を逃さず参り来よう。 宮人に 行きて語らむ山桜 風よりさきに来ても見るべく  とおっしゃるお振舞い、声使いさえも目が眩みそうなのに、 優曇華の 花待ち得 たる心地して 深山桜に目こそ移らね  と聞こえたので微笑んで、時が来て一度開くというのは難しいけどなあ、とおっしゃる。聖は盃を頂いて、  奥山の 松のとぼそをまれに開けて まだ見ぬ花の顔をみるかな  と泣いて拝見する。聖はお守りに神聖なる棒「ドッコ」独鈷をさしあげる。ご覧になった僧都は、聖徳太子が百済から得なさった金剛子の数珠の玉の装束をしている、後にその国から入れた箱で唐風なものを、透けた袋に入れて、五葉の枝に付けて、紺瑠璃の壺に薬を入れて、藤や桜などに付けて、付けてある贈物を、捧げて奉りなさる。君は、聖をはじめ読経をしている法師の布施や設けの物を様々に取りにやらせてあったので、その周辺の山人までもが然るべき物を頂き、読経などをしてお出になる。中に僧都がお入りになり、あのお聞かせになったことを似たように聞かせなさったが、ともかくもただいまはお聞かせする方がない、もしお気持ちがあればもう四五年過ごしてこそはともかくも、とおっしゃると、そうですね、と同じ様にだけあるのを本意でないと思う。  お便りが、僧都のもとにいる小さな童によって、 夕まぐれ ほのかに花の色を見て 今朝は霞の立ちぞわずらう  お返しに まことにや 花のあたりは立ち憂きと 霞むる空の気色をも見む  と、由緒あるじつに高貴な手を捨ててお書きになった。  車にお乗せするところに大殿から、どこにともなくていらっしゃること、とお迎えの人々や君達などが大勢参られた。頭中将、左中弁さらぬ君...

第5章「若紫」(1/3)雀

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 若紫(1/3)雀 犬君が逃してしまったのです 若紫  熱病をお病いになって、様々に呪じない祈祷などを参らせなさるが、効果がなくて何度もおこりなさったので、ある人が、北山ですが何がし寺という所に偉い行者がおります、去年の夏も世に起こって、人々が呪じない病っていたのをやがて止めたという類いが多くありました、こじらせている時は憂くおりますので、すぐにでもお試しください、などお聞かせするので、呼びに遣わすと、老い屈まって部屋の外にも出ない、と申しているので、どうしようか、ごく忍んでやろう、とおっしゃって、お供には親しい四五人だけにしてまだ夜明けにいらっしゃる。 やや深く入る所であった。三月のつごもりなので、京の花はみな盛りを過ぎていた。山の桜はまだ盛りなので、入りもていらっしゃると、霞の佇まいも優雅に見えて、こんな光景はご経験がなく、所狭い御身なので珍しくお思いになった。  寺の様子もじつにあわれである。峰高く深い岩屋の中に、聖は入っていたのだった。お登りになって、誰だともお知らせにならずとてもとてもおやつれになっていたが、明らかなご様子なので、ああ畏い、一日召しおっていらっしゃったのでは、今はこの世のことを思っておりませんので、験方の行も捨て忘れておりますのに、どうしてこういらっしゃっているのでしょう、と驚き騒ぎ、うち笑みつつ拝見する。じつに尊い大徳であった。そうあるべきものを作り、すかせたてまつり、加持など参るうち、日は高く射し上がった。  少し立ち出て見渡されると、高い所なのでここかしこに僧坊があらわに見下ろされる。ただこのつづら折りの下に、同じ小柴だが麗しくし渡して清らかな家屋、廊下など続けて木立がとてもよしあるは、何人の住まいか、と問いなさると、お供の人が、これは何がし僧都が二年籠もりおります方にございますそうで。心の恥ずかしい人が住むという所なんだろう、あやしくも余りにやつしているなあ、聞いてこそいるが、などおっしゃる。清らかな童子が沢山出てきて、閼伽を捧げ、花を折ったりするのもあらわに見える。  あそこに女性がいるんだろう。  僧都がよもやそのようには居させないかと。  どういう人だろう。  と口々に言う。下りて覗く者もいる。いけてる女性たち、若い人、童女が見える、と言う。  君が行をなさりつつ、日が高くなるうちに、どうなのかと思っているのを、とこう...

第4章「夕顔」(2/2)右近

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夕顔(2)右近 あなたが頼りなのです 宵が過ぎる頃、少し寝入りなさると、枕のお上にいとおかしげな女がいて、おのがいとめでたいと見たてまつるをば訪ね思わずにこう異なることなき人をおいておわしてときめかせなさるこそいと目覚ましく辛けれ、と言ってこのお傍の人を掻き起こそうとする、と見なさる。ものに襲われる気持ちがして驚きなさると、火も消えていた。憂立ておぼさるので太刀を引き抜いて打ち起きなさって右近を起こしなさる。これも恐ろしいと思っている様子で参り寄った。  渡殿の宿直人を起こして、紙燭をさして参れと言え、とおっしゃると、どうしてまかります、暗くて、と言うので、ああ若々し、とうち笑いなさって手を叩きなさると、山彦の答える声がまじうとましい。人聞きつけられず参らぬのに、この女君はいみじくわななき惑ってどうしようかと思った。汗もしとどになって自失の様子だ。もの怖れをなん理由もなくさせなさる本上にて、いかにおぼさるるにか、と右近も言う。いとおし、と思われて、俺が人を起こそう、手を叩けば山彦が答える、まじうるさい、ここに、しばし、近く、と言って右近を引き寄せなさって西の妻戸に出て戸を押し開けなさると火も消えていた。  風が少し吹いていて、人は少なくて、控える者は皆寝ていた。この院の担当の子、睦まじくお使いになる若い男、またうえ童一人、例の随身だけがいる。呼ぶとお答えして起きてくると、紙燭をさして参れ、随身も弓打ちして絶えず声づくれと仰せよ、人離れたる所に心とけて寝てるものか。惟光の朝臣が来てるのでは、と問わせなさると、控えておったが仰せ言もない、暁月にお迎えに参ろうのよし申してなん、退きおりました、と聞こゆ。  このこう申す者は滝口であったから、弓弦を激つきづきしく打ち鳴らして、火危うし、と言い言い、担当の曹司の方に行った。内に配慮して、名対面は過ぎぬらん滝口の宿直申しいまこそ、と推し量りなさるは、まだあまり更けぬからこそ。  返り入って探りなさると、女君はそのまま臥して、右近は傍らにうつぶし臥していた。  これはなんだ、ああもの狂おしのもの怖れだ、荒れている所は狐などのようなものが人を脅かそうとして恐ろしく思わせるんだろう、まろがいれば左様のものには脅されない、と言って引き起こしなさる。  いと憂立て乱れ気分が悪くおりますので、うつぶし伏しておりましたか。御前にこそ訳も分から...